AIとロボットが社会を変える。これは事実だ。
Claude Codeのような開発支援AIは、コードを書く仕事の速度を変え始めている。 物流、製造、接客、介護、警備の現場ではロボット導入が進み、人間が担ってきた定型業務は確実に減っていく。
だから、「自分が生き残る方法を考えろ」という警告自体は間違っていない。
問題は、その不安の出口を「ドルを買え」「T-bill MMFなら安全だ」という個人投資へ短絡させる議論である。
AIとロボットによって資本の集中が進む可能性はある。 半導体、クラウド、計算資源、基盤モデル、巨大データを持つ企業が有利になるのは当然だ。 資本力の差が競争力の差へ直結しやすい時代になることも否定しない。
だが、そこから「個人と中小企業はもう稼げない」と断定するのは、分析として粗い。
AIは巨大企業の独占物であると同時に、個人や中小企業の参入障壁を下げる技術でもある。 これまで大企業だけが持てた分析、人員、制作能力、開発能力の一部を、小さな会社や個人事業主でも使えるようにするからだ。
一人の士業がAIで文書作成を効率化する。 町工場が画像認識で検品精度を高める。 小規模な開発会社が少人数で大規模案件に対応する。 地域の店舗が顧客分析や広告運用を自動化する。
AIが奪うのは、すべての仕事ではない。 主に代替可能で、手順が固定され、責任の所在が薄い作業である。
逆に価値を増すのは、
顧客の悩みを見抜く力、
現場の知識、
業界特有の経験、
人間関係、
そして最終判断の責任を引き受ける能力だ。
大企業はAIモデルを持てる。
だが、地域の顧客との信頼まで買うことはできない。
特定業界の細かな商慣行を、現場の空気まで含めて理解することも簡単ではない。
個人と中小企業が消えるのではない。 AIを使わず、従来の作業だけを売り続ける個人と中小企業が厳しくなるのである。
問題なのは「T-bill MMFなら安全」という言葉だ。 ここでいうT-bill MMFが米国短期国債を主な投資対象とするMMFを指すとしても、日本円で暮らす人にとって、それは無条件の安全資産ではない。 家賃も税金も食費も、日本では円で支払う。 ドル建て資産がドルベースで安定していても、円高になれば円換算では資産価値が下がる。 外貨建て資産の安全性と、日本の生活者にとっての安全性は同じではない。
金融の世界で「安全」という言葉ほど危険なものはない。
米国債の信用力、短期債の値動き、MMFの流動性、為替変動、購入時のレート、売却時のレート、手数料、税金。
これらを全部無視して「ドルを買え」と言うなら、それは資産形成の助言ではなく、不安を使った陰謀論者の戯言である。
必要なのは、生活防衛資金を生活通貨で確保したうえで、目的、期間、負債、収入、家計の耐久力に応じて資産を分散することだ。
AI不安を理由に外貨へ偏ることは、未来への備えではない。単に別のリスクを抱え込むだけである。
「AI、ドル、ロボットが新しい政治活動だ」という主張も危ういと感じる。
これは、政治の問題を個人の自己責任へ押し戻す思想である。
AI時代に問うべき政治課題は明確ではないか?
巨大IT企業による市場支配をどう防ぐのか。 中小企業がAI人材や計算資源へアクセスできる環境をどう作るのか。 自動化で職を失う人への再教育を誰が負担するのか。 データの所有権や監視社会化をどう規制するのか。
これらは、ドルを買えば解決する問題ではない。
むしろAIとロボットが社会の中心になるほど、政治を監視し、政党を批判し、具体的な制度を求める必要がある。
政治を追いかけて笑う時代が終わったのではない。政治を笑って終わらせるだけでは足りない時代になったのではないか?
AI時代に必要なのは、恐怖を煽る陰謀論者の「ドルを買え」という号令に従うことではない。
自分の仕事をAI前提で組み替えること。
顧客との信頼と専門性を蓄積すること。
資産を冷静に分散すること。
そして、AIの利益が一部の巨大資本だけに独占されない制度を政治に要求することだ。 戦う武器は皆、平等にある。
未来は、資本家に最初から握られているわけではない。
市民が考えることをやめ、政治が市場の独占を放置し、個人が恐怖で判断したときにだけ、未来は一部の者に握られる。 陰謀論者の戯言に付き合ってる暇はない。
#陰謀論者に騙されるな
コラムニスト:芸能ライター山本武彦
過去に夕刊フジで六本木パパラッチ日記、週刊実話にて六本木黒服の芸能界裏fileを連載。
2024年からXで政治評論シリーズを投稿中。
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